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アブトロニクス

 最近になってCMでよく見かけるようになった、腹筋マシーンの最新作であるアブトロニクス。なぜか外人だらけの通販のお決まりパターンというレールに沿っている。自分では何の努力もせずに腹筋を鍛えられるというのがこの製品のウリである。電気刺激によって筋肉を収縮させるそうだ。しかし、もし自分の目の前にいる人物がごく普通に振舞っているように見えて、その実、腹にこのハイテクマシンを装着しているとしたらそれはさぞかし不気味な光景であろう。自らにとって不可視な領域に対して、既に腹筋マシンによるハイテク汚染が始まっているのである。
 ここで、このハイテク腹筋マシンの有用性について考えてみることにしよう。これを使えば確かに肥大した腹筋が素晴らしい外観を作り上げるであろう。だが競技者の目から見るとこれは全くといっていいほど無意味なことである。競技者にとっての関心事は筋肉を「より太く」することではなく「より強く」することなのである。ハイテク腹筋マシンはこの競技者の志向に対しては意味があるのかどうか甚だ疑問である。何故なら、ハイテク腹筋マシンによる筋収縮は不随意的であるからだ。筋力トレーニングは筋肉を随意的に動かしてこそ意味があるのである。そうでなければ神経を介して脳と筋肉が結合されない。また徒に筋肉を硬直させてしまう可能性があり、怪我の原因となることが予想される。
 ここで電気刺激による筋力強化が無駄なのかと思うかもしれないが、決してそうではない。十分に研究すれば画期的な方法が見つかるかもしれない。現時点ではどうともいえないのである。
 ハイテク腹筋マシンの効果的な利用法をいくつか考えてみた。いくつか電気刺激を加える筋肉は意図的に収縮させ、拮抗筋を弛緩させると効果的であるかもしれない。例えば、体前屈の姿勢で腹筋に電気刺激を加えるのである。こうすれば普通に体前屈するよりも深く前屈できるだろうし、柔軟性の向上も期待できる。また、可動域を大きく使って求心性収縮を起こすときに僅かに電気刺激を加えて筋肉に対する負荷を大きくする方法が考えられる。
 要するに腹筋マシンは必要ないということである。しかしながら外人が腕や尻に腹筋マシンを巻きつけているのは十分に笑える。これからも馬鹿げたCMで我々を楽しませてくれることを期待しよう。



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